午後は「俎(まないた)」づくりです。実は、昨秋、100枚ほどの俎をつくるつもりでした。それが諸般の事情でポツリポツリの制作になっています。今日も4枚ほどの目処で妥協することにします。

脚つきです。その脚の取り付けを「蟻形追いれ接ぎ」にします。通称、「蟻組」です。2匹の蟻が鉢合わせしたときの形に似ていることから命名された接ぎ方(はぎかた)です。

本来、この脚の有無には2つの相反する考え方があります。一方は、無い方が両面使える利点があります。他方、脚があることで、衛生面が保たれるのです。今回は脚あり、です。しかし、この「蟻組」の加工には、それなりの技術が伴います。ま、今回は、その稽古のようなものです。


まず、鉋がけ(かんながけ)です。プレナーの刃が欠けていることから縞(しま)が出来ます。刃の欠けた部分だけ削除されないからです。やや不満足です。しかし、この処理は手鉋(てかんな)による微調整で何とかなりそうです。

ポイントとなる蟻の接合部分の加工はルーターが熟(こな)します。しかし、オスとメスの幅の設定が微妙です。これはルーターの定規の位置で決まります。紙1枚の誤差が、出来の全てを決定する微妙な世界です。

その意味では、1枚加工するよりも20枚~30枚を加工した方が効率的です。期待する位置に定規を設定することで、あとは考えることなく加工が進むのがこの世界です。今日は4枚ですが、比較的簡単な作業でした。

昔から、俎に適した材は柳(やなぎ)と言われています。銀杏(いちょう)もそうです。弾力があることからのようです。また、包丁(ほうちょう)の刃に優しいのだそうです。しかし、現代許されている木は「青森ヒバ」だけです。


その理由は、衛生面にあります。抜群の抗菌力を持つ「青森ヒバ」だけが、俎の材料として認められているのです。関東の檜(ひのき)と格段の違いがあります。その「青森ヒバ」は、世界中で、日本の奥州最北端だけに生息しています。

この俎はお歳暮用です。これまでつくったものは、すべてお分けしています。いくら作っても追いつかないのが俎です。実は、我が家で使っている俎も、数年前からの古いものです。正月には鉋をかけたばかりの初々しい板で豆腐を切りたいところです。


午後から霙(みぞれ)になります。本格的な冬が近くまで来ているようです。
2012/12/16(日) 18:09

シュミエン(趣味の園芸)後、今日も工房に籠(こも)ります。なんだかんだの課題が山積しています。

まず、旅館に納めている「箸置き」の下拵え(したごしらえ)です。鉋(かんな)がけは終えています。今日は、面取りとカットです。面取りは専用の鉋を使います。注意点は、刃を進める方向です。逆目(さかめ)ではボロボロになるのです。

当初不得意でしたが、何百本も作業しているといつの間にか覚えるものです。しかし、目の整っている青森ヒバといえども、中には、途中で逆目になっているものもあります。今回の材にはそれが多いです。醜い出来は、次の工程のサンダーに委ねることになります。

作業中、T氏がお見えになります。『午後から崩れます。明日からは雪マークです。柿(かき)をやっつけましょう。』と促します。近くの屋敷の柿の木の伐採です。数か月前から依頼をうけていましたが、さまざまな事情で伸び伸びになっていたのです。

様々な事情というのは、実の熟すタイミングを窺がっていたことと、何よりも、億劫さの所為です。実は、太い部分を製材して、木工の材料にするつもりでした。また、実も捨てがたいところもあったのです。

北の柿の殆んどは渋柿です。これもそうです。伐るタイミングを見計らっていた頃、『柿渋をつくりませんか。』の提案もいただきました。しかし、柿渋の柿は7月頃のものを使うのだそうです。時既に遅し、です。


話は飛びますが、数か月前、柿渋を塗り重ねた布を見ました。訊くと『これは、酒袋に柿渋を塗ったものです。』と言います。それでハンドバック等をつくっているのです。驚きます。

即、津軽の酒屋を訪ねます。将軍吉宗の頃から続いている造り酒屋です。S社長さんに、「酒袋は残っていますか。」と訊くと、『今は貴重なものになっていますが、昔は捨てたものです。残念ながら残っていないのです。』の返事です。

しかし、『南部のある酒屋には600枚ほど残っていた筈です。今は宝物として保管しています。』と教えてくれます。酒袋というのは、きつく織った麻布に渋を塗って丈夫にし、その中に発酵した米を入れて搾る袋です。残念ながら、その、渋塗りの酒袋づくりは断念することになりました。

数か月間ヤキモキしてきた柿の伐採でしたが、雪が降っては更に億劫になりそうです。友人にお尻を叩かれて断行を決意します。使うツールはチェンソーとロープ、そしてブルドーザーです。

ロープは、木が倒れる寸前に、倒れる方向をコントロールするために使います。実際に伐るのはチェンソーです。刃は、先般、新品に取り替えたばかりです。まず、木を倒す面をVの字に切り取ります。次に、反対側に刃を入れるだけです。


木を倒すために費やした時間は3分ほどです。しかし、この後が厄介です。製材する部分は地上2mほどばかりです。他は薪(まき)にするつもりです。それも、一年後の薪です。伐ったばかりの木は水分を含んで燃えないのです。

そして小枝の処理が大変です。無数にあるのです。そして、肝心の柿です。既に落ちて朽ちているもの、熟してカラスの餌(えさ)になったものが大半ですが、結構な量が残っています。

昨年、この類(たぐい)の柿を大量に手に入れて塩漬けを作りました。見事に失敗します。今回こそは何とかしたいところです。しかし、干し柿にするには蔕(へた)にT字の枝をつけていないことから無理のようです。

一般的な渋抜きには炭酸ガスや焼酎を使うようです。中には、温泉に漬ける方法もあるそうです。またまた新しい課題が出現します。

柿の木は、柿のように黄みがかっています。
2012/12/16(日) 17:31

「トレイ」は、形づくりからです。丸鑿(まるのみ)で内側を削ります。和み(なごみ)の演出のつもりです。切れ味の鈍った鑿です。本来はスパッと潔い切り口を期待したのですが、サンドペーパーと「埋剤」での微修正に妥協します。

いよいよ塗りです。素材がケヤキ(欅)であることから、本来は黒漆での拭き漆が一般的です。しかし、冒険することにします。以前から試したかった「歌舞伎の緞帳(どんちょう)」の配色です。

これは3色で構成されています。しかし、その3色には違いがあるようです。「黒、茶、緑」、「黒、黄、緑」、「群青、ピンク、薄緑」、「群青、柿、青」、「黒、赤、緑」、「黒、柿、萌黄」等です。

先日お亡くなりになった勘三郎の中村座は「黒、白、柿」だったようです。


悩んだ末、「黒、赤、緑」に決めます。それを、拭漆(ふきうるし)でケヤキに演出させようとします。

以前、色漆の使い方が曖昧でした。黒漆での拭漆の後に色漆を使うと、期待した色にならないのです。

しかし、先般、漆問屋のH氏がお出でになった折、『最初に塗るのは色漆です。十分に色が浸み込むように、3回は塗ります。』と教えてもらいます。

今日はまず「赤」を塗ることにします。木地への浸透を促すためにテレピン油を混ぜます。使う漆の量はほんの少量です。しかし、漆をチューブから多く絞り出してしまいます。結局、他に塗るものを探すことになります。

候補に上がったのが「バインダー」です。材質は青森ヒバです。数回つかっていますが、これまで白木でした。これを歌舞伎調の配色の拭き漆に仕上げることにします。

生漆(きうるし)は適度な温度と湿度で乾燥します。高い気温と高い湿度です。気温と湿度とでは湿度が優先します。しかし、冬の今は、この2つの条件に恵まれていないことから、完成までには結構な時間を要しそうです。


色が混じらないようにマスキングテープを使うことにします。赤漆での拭漆を繰り返した後、緑の拭き漆になります。これも数回繰り返して最後に黒漆になります。

この色漆の拭漆は、国内ではやっている御仁はいないようです。数年前、我が工房KUROOBIでの作品が第一号であったようです。桶(おけ)を、朱漆の拭漆で仕上げたのです。

金属的な透明感が生まれました。その桶は、今はK女史の手元にあります。毎年、前沖(まよき)の島で行われる龍神祭になると大福餅を入れて持っていくのだそうです。

一方のトレイは斜めのストライブにします。そして、他方のバインダーを水平にします。この「歌舞伎の緞帳もどき」の作品も、面白くなりそうです。


2012/12/15(土) 17:40

今日は土曜日です。師ではないのですが、師走の中、お休みをいただきます。いつものことですが、休みの日は早起きになります。まず、暗い中の沐浴です。路面の積雪は0で、カラカラに乾いています。

そして、朝食後、煙突掃除です。夏分も薪(まき)を焚いていたことで、このところ燃えが鈍くなっています。いつもはゴーッと燃えているのに勢いがなくなっています。

煙突の内壁に煤(すす)が付着して吸い込みが微弱になっているのです。それも煙突の孔が小さくなるほどの厚い煤です。丁度、血管の動脈硬化のようなものです。身につまされます。


煤の削除後、即、点火します。やはり、燃え具合は一変します。気を良くして工房に籠ります。このところ手がけている「額」と「トレイ」の仕上げです。

「額」に漆を塗ったのは1週間前です。今日は組立です。「額」に「トンボ」を付直します。そして「吊具」の取り付けです。壁に掛ける際の紐(ひも)の取り付け金具です。


額を縦に使うときと横に使うときの2セットです。そして、スタンドに2個の蝶番(ちょうつがい)を取り付けます。

実は、この蝶番の取り付けが不得意です。理由は2つあります。1つはその構造をよく理解していないことです。次に、ビスを揉み込む際、ビスの先端が蝶番のビス孔の中心にきにくいのです。

下孔をあけても微妙に狂うのです。不満足に妥協しながらも、一応の完成です。

2012/12/15(土) 17:37
「額」づくりの作業は短時間で終えます。午後は、別の課題を設定します。「トレイ」づくりです。この材料もケヤキです。ケヤキを入手したことで、これまでやってみたかった課題が次から次と浮かんでくるのです。

まず、耳材を数回プレナー(自動カンナ)に通して厚めの板に仕上げます。そして正確な長方形にします。終盤ではこの正確さを削除することになりますが、スタート段階では正確な直方体にしたいところです。

ここまでの作業は、電力がしてくれます。基準となる1辺に注意しさえすれば簡単な作業です。今日の課題のテーマは、その内部を搔き出すことにあります。

実は、この加工作業は、初めての挑戦です。結局は失敗に終わります。実は、時間を要し過ぎたのです。搔き取りのツールにトリマーを使ったのですが、淵の角度の加工の準備をしていなかったのです。

最終的に、手作業で何とかなると思っていたのです。本来は、ビットに角度をつけて削れば一瞬で済む筈です。そのジグ(治具)の仕掛けをしていなかったのです。

粗いサンダーを使って形の微調整に挑みます。納得する形までには天文学的時間を要します。1時間以上もの筋力トレーニングの末に思い知らされます。

「急がば回れ」の諺(ことわざ)が頭を過(よぎ)ります。結局、今日は60%の段階で妥協します。無駄な時間を使った悔恨があります。しかし、負け惜しみではありませんが、時間をかけてコツコツと作業することにこそ楽しみがありそうです。

話は飛びますが、昔見た西部劇で、カウボーイが小刀一本で木を削って人形やオモチャのピストル、笛等をつくっていました。牛を追う長い旅の中、夜、寝る前に少しずつ削るのです。そして、見事に削り上げた作品を小さい子供にプレゼントするのです。

感激したものです。今回の「トレイ」づくりは、その真似事のようなものです。

この「トレイ」づくりは、将来に備えての稽古です。実際は、「ペン皿」、「おしぼり入れ」、「タバコ入れ」等に発展することになります。H氏は、『おしぼり入れが面白そうです。』と言っています。

ノロウィルスを漆の器に入れると24時間で死滅する結果がでているそうです。100個ほどつくりたいところです。しかし、この設計と方法でつくるとなるとナンセンスです。

ぜひ、本物の木で、抗菌力に富む漆塗りで、作業時間の短い、オリジナルのデザインで発信したいところです。


そろそろ、ブルドーザーの出番のようです。実は、10年ほど前、腰が痛みを訴えてから、除雪用の雪べらやスノーダンプを使えなくなりました。座っての作業には支障のないことから、頼っている愛車です。雪の朝は、夏よりも早起きになります。


2012/12/09(日) 20:50
今日の奥州最北端の最高気温は1°です。他方、H女史の住む日本最北端の釧路では3°です。緯度と気温には、必ずしも相関関係は無さそうです。

他方、今日の積雪量は、奥州最北端の当地は0です。尤も、車で30分ほどの酸ヶ湯(すかゆ)では145cmもあるそうです。昨日出かけた津軽地方もまた結構な雪でした。積雪の多少は、海抜の違いの他に東西の違いにも関係がありそうです。

今日は朝から終日の工房活動です。先週手がけた「額」を鍛えることにします。実は、昨日、漆問屋のH氏がお出でになりました。いつものように、当面している課題や疑問についての話になります。それに啓発されての今日の作業です。

その中に、数種類の色漆を使うときの手順があります。当初、「額」に黒漆に、赤漆や他の色を散らすつもりでした。今回は、黒漆で拭いた後に、部分的に赤を散らしてみます。しかし、赤も拭くことで、期待する明確さが出なかったのです。


H氏に訊くと、『色は、白木に先に塗ります。これを3回ほど繰り返して、十分木地に浸み込ませた後、黒漆で拭くのが一般的です。』と教えてくれます。しかし、『黒で拭いた後に色を拭いたのを初めて見ました。面白いですね。』とも言ってくれます。結局、今回は、このパターンのまま続行することにします。

ところが、黒漆の上に載った色漆は、布で擦るとその色が付着します。顔料を含むことで、漆の成分が純粋でなくなるからのようです。結局、赤を塗った上から黒漆で拭き直すことになります。

H氏はまた、『もう少し艶(つや)があってもいいですね。』と助言してくれます。漆は塗り重ねることで艶を増します。当初、1回で終えるつもりでしたが、今日も塗ることになります。結局、都合5~6回は繰り返すことになりそうです。

ここまで来れば、その気になってしまいます。他の付属品も準備することにします。葉書大用の「額」です。離れた壁では写真や絵では遠過ぎます。書斎の机に置いて間近に見たい写真もあります。そのためのスタンドもあった方が良さそうです。

しかし、いざつくるとなると、正確な構造が解からないことに気づきます。ハタと考えてしまいます。見たことはあるのですが、記憶が曖昧なのです。これと同じようなことが身の回りにたくさんあります。


毎日居る事務所の窓ガラスが、どの程度の大きさで何枚か、と突然聞かれると、答えることが出来ないのが一般的です。訊かれて見直すことで認識するのです。これは人間の弱点のひとつのようです。

結局、段ボールでサンプルを作ってみます。意外に簡単そうです。材料をフレームと同じケヤキ(欅)にします。薪小屋(まきごや)で適当なものを物色します。

方針が定まれば、作業は簡単です。2枚の板を両面テープで貼りあわせて糸鋸(いとのこ)で裁(た)ちます。カットはアバウトに妥協します。その後、いくらでもサンダーで調整できるからです。

そして黒漆で拭きます。何回か繰り返すことになります。納得した時点で蝶番(ちょうつがい)を取り付けることになります。

2012/12/09(日) 20:16