このところ、微かに日が長くなってきています。日の出が早く、暗くなるのが遅くなっています。冬至が過ぎて、これから夏に向かっているからなのでしょうが、年の瀬の、そしてこれから真冬に向かう今の現象としては不自然さを感じてしまいます。

少しずつですが、昨日から煤払い(すすはらい)に気をつかっています。右の屏風(びょうぶ)を左にやり、左の台を右に移動する程度です。不思議なことに、それだけで隠れている綿ゴミが露出され、クリアーになります。

破れた障子(しょうじ)の繕(つくろ)いにも手を出します。残念ながら、仕上がりの満足度は48%程度です。紙を期待する大きさに裁(た)つこと、そして綺麗な直線でカットするのが意外に難しいのです。

その創心(きずごころ)を抱いて、近くのホームセンターに出かけます。このところの課題の、「額スタンド」用の蝶番(ちょうつがい)の調達です。残念ながら、気に入ったものはありませんでした。妥協しながら数種類を求めます。

工房に戻ってあてがってみると、やはり、不満足です。ここで、進路変更に踏み切ります。実は、これまで考えていたのは脚の2片の片側1辺を蝶番で固定し、それを開いて使うバージョンでした。それをH字型に固定するつくりへの進路変更です。

材料は、例によって薪(まき)の中から探します。それも、節があったほうが面白そうです。まず、均一な厚さにするためにプレナー(自動鉋)に通します。そして期待する長さにカットします。


これもホゾ接(は)ぎにするつもりです。オスのホゾはテーブル丸鋸で加工します。問題は、メスです。

前回は、この加工をドリルと鑿(のみ)で行いました。少し億劫です。トリマー、ルーターの設定はそれ以上に億劫です。気力が少し衰えています。

折角の工房活動です。ルンルン気分での作業でなければ勿体ないのです。今日の作業はここまでにします。大晦日になるか元旦になるかは解かりませんが、満を持すことにします。


出かけたときの気温は8℃でした。雨が降っています。このところ、最高気温もマイナス5℃だったのです。驚きます。

その寒気で、水道の破裂が多かったようです。しかし、昨日今日は土日の年末です。業者も休んでいるところが多いです。友人のZ氏が活躍したようです。

2012/12/30(日) 19:17

大掃除のつもりが、いつの間にか額のスタンドづくりの一日になってしまいます。材料のケヤキは、一度使ったもののリニューアルです。

テーブルソーとプレナーで部材を揃えてL字型をつくります。久しぶりにホゾ接(は)にします。オスの加工のツールは丸鋸です。刃のあたる位置を少しずつ移動させて凸型をつくります。15~16回は繰り返したようです。

メスは、ドリルで孔を穿(うが)ち、鑿(のみ)で仕上げます。継ぎ目に微かな?段差が生じます。いつものことです。やはり、の世界です。目地調整をサンダーに頼ります。スタンドとしての機能はこれで十分です。そして、坊主面ビットで面取りします。


ここからが蛇足の連続です。まず、ホゾを嵌(は)め込んだ部分に竹釘(タケクギ)を打ちます。そして、底板となる脚の部分に空白をつくります。脚の座りを良くするためのものです。削除する部分の位置決めは、これもアバウトです。

そして、ストッパーの取り付けです。今回は、脚の前面に丸棒を埋め込むことにします。孔をあけて丸棒を打ち込むだけです。しかし、その丸棒づくりからのスタートになります。実は、工房のどこかに、以前つくった丸棒がある筈なのですが、探すことができなかったのです。

この丸棒づくりは、難しそうに見えても、意外に簡単な作業です。四角い棒の角を削除すると円柱になります。孔に合った太さにすることも意外に簡単な作業です。探すに要する時間よりも短いものです。


今日は一気に塗りまで進むことにします。当然のように、拭き漆(ふきうるし)仕上げです。ケヤキには、不思議に黒漆が馴染むのです。

ついでに、バインダーにも塗ることになります。結局、今日もまた塗師(ぬし)の生活になります。


夕刻、忘年会に参加します。たくさんの皆さんと会話します。若い方、ご年配の方、そしてさまざまなジャンルの皆さんと、です。ツボケ族、アラハバキ族、北畠氏、更には藤原定家も出ます。

またまた新しい世界に触れます。

2012/12/29(土) 22:57

年末です。今日は人並みに大掃除を決意します。まず、廊下に手をかけます。こまごました作品が数個のダンボール箱に入っています。勿論、埃(ほこり)を被ってです。

既に、ダンボール箱に何が入っているかは記憶が無くなっています。つい、この箱は何だろう、あの箱には何が入っているかを確かめたくなります。予期していないものが次から次に出てきます。

そして、手に取ってしまいます。ここ1~2年前につくったもの、30年ほど昔のもの等雑多です。それぞれに想い出が蘇(よみがえ)ってきます。丁度、アルバムの写真を1枚ずつ、そして1ページずつ辿(たど)るようなものです。

その中に「額」があります。昔つくったものです。電動工具の殆ど無い、手鋸(てのこ)、手鉋(てかんな)、金槌(かなづち)、そして、彫刻刀が活躍した時代のものです。材料は、庭の梅の木です。


泊りの出張が多かった当時、どこに出かけるにも、バックに、彫刻刀と額のフレームの1本を入れて動いていました。宿舎で、寝る前の1時間ほど彫っていました。

梅の木が硬く、図案が細かいことから、結構な手間がかかりました。4片を彫り終わるまで2年ほども費やしたようです。日本古来の図案を使いました。宝物が多いです。

米俵(こめだわら)、丁子(ちょうじ)、珊瑚(さんご)、鍵(かぎ)、琴柱(ことじ)、桔梗(ききょう)、梅(うめ)、古代銭(こだいせん)、鉞(まさかり)、巻物(まきもの)、打ちでの小槌(こづち)、扇(おうぎ)等です。

津軽の老舗造り酒屋のカレンダーの図案や、子供の頃の掛け布団の図柄にも使われていました。昔から馴染んできたものばかりです。しかし、今の日本ではポピュラーでなくなっているようです。


鉞(まさかり)は、昔、武功をたてた侍に天子が授けたといわれる縁起物です。丁子はクローブです。昔は貴重であった薬です。琴柱(ことじ)は、琴の弦を支える駒です。そして蔵の鍵です。今の若い方には理解されない世界のようです。

30年前につくった拙い作品ですが、妙に新鮮に映ります。早速、スタンドをつくり、テーブルの上で楽しむことにします。スタンドのデザインは、つい先般つくったバージョンにします。そして材料はケヤキ(欅)です。あり合わせの材を加工します。

いつものように、設計図の無い、アバウトな部材づくりです。設計図が無いことで、逆に、想像する時間は長くなります。この悩む時間が何とも言えない至福の時てす。
2012/12/29(土) 22:15
若干の黒漆が残ります。勿体ないことから、別の木地を探します。候補に上がったのは「応量器」と「茶筒」です。以前、H氏から譲られたものです。何れもケヤキ(欅)です。

「応量器」というのは、禅宗の僧が使う食器です。6個の皿や椀が一番大きい椀に収納できる「入れ子」になっています。「応量器」の名前は、「食べるものの量に応じた器」から命名されたようです。

その構造は、丁度、ロシアの「マトリョーシカ」に似ています。しかし、起源については、「応量器」が先で、「マトリョーシカ」は禅宗の「応量器」からヒントを得てつくったとされています。極端に清楚で、且つ合理的な日本文化の一端です。


そして、「茶筒」です。一般的な茶筒は、内部に金属板が入っています。しかし、これには金属が使われていなく、全てケヤキです。それだけに、身と蓋(ふた)の合わせ目の加工には高度な技術が要求されます。

話は飛びますが、蓋物(ふたもの)は、本体と蓋からなります。蓋は一般的ですが、本体は「身」です。最近の国語には出会うことの殆ど無い言葉になっているようです。残念なことです。

結局、今日塗った点数は、ペン皿、バインダーのパーツ2個、応量器6個、茶筒の身と蓋、中蓋、額、額立て、そして玩具2個、更に、バイダーのストッパーとなる3片の皮です。都合19もの数になります。

これは久しぶりの数です。ビッショリと汗をかきます。気温と湿度の低い冬は漆塗りに向いていない季節です。しかし、薪ストーブによって、工房は冬でなくなっているのです。尤も、それは、日中だけのことですが・・・。

漆風呂(うるしぶろ)が飽和状態になります。この漆風呂は本来、数個の小作品用につくったものです。この分では、もう2まわりも大きい風呂にすべきのようです。

漆塗りに没頭していたのは4時間以上です。久しぶりの満喫感に浸ります。


昼過ぎ、M氏がお出でになります。数年前まで現役であったチャンピオンです。埃(ほこり)だらけの工房にご案内して、様々な講釈に付き合っていただきます。聞き入ってくれます。

2012/12/24(月) 15:02
昨晩の気温はマイナス7℃ほどだったようです。道路は1cmほどの積雪です。師走の中、今日もお休みをいただきます。

まだ暗い中の沐浴後、即、工房に籠(こも)ります。課題をペン皿とバインダーの塗りに設定します。木地は手作りです。特にペン皿は薪材から鍛え上げた完全手作りです。

拙(つたない)い加工ですが、それだけに和みを醸(かも)し出しているようです。完璧に整い過ぎた作品には不安感が伴うようです。そのことからか、お抹茶をいただく茶碗も歪んでいるものが多いようです。

この歪みは、一旦、轆轤(ろくろ)で完璧な形をつくってから、敢えて崩しているようです。


しかし、我が工房では、完璧を目指しているものの、いつの間にか歪んだ結果になります。拙い技術と妥協心のなせる業のようです。

ま、結果において作者が満足しさえすれば、到達点は同じと思い、落胆することなく作業は進んでいきます。

3色の配色にします。最初に赤、その後に緑、そして最後は黒にします。今日は、黒の2~3回目です。既にこの段階で完璧さを失っています。実は、折角塗った緑漆が削除されているのです。

この原因は、緑が十分に乾く前に黒を施した所為です。黒漆を拭き取る際に緑も拭き取られてしまったのです。しかし、この状態も良し、として、黒漆を重ねることにします。弁解するとすれば、完璧さから遠ざかったと言えるのです。

ホームセンターの塗料コーナーに「古び粉」が置かれています。昔、この使い方が解かりませんでした。綺麗な色に仕上げるのではなく、敢えて年期の入った古めかしさを演出するときに使うことを最近になって知ります。


このところの作品づくりにはいつも課題としているテーマです。本来は、自然のままに自在を表現したいのですが、いつも、人工的な自然になってしまうのです。大胆さの無い、セコい結果になるのが常です。

このことについては、おそらく、世阿弥(ぜあみ)もまた悩んだ筈なのです。たかがペン皿やバインダーであっても、納得する作品に辿りつくためには、音楽や文学や数学、そして格闘技や庭づくり等の修行が必要とされるのかも知れません。それでも「自在」には辿りつけないのかも知れません。

2012/12/24(月) 14:49
数日前の、お勤めに出かける朝の気温は-6℃、そして日中の最高気温は-3℃です。奥州最北端の道路はバリバリと凍っています。因みに、日本北端の太平洋側の釧路は0℃と、当地よりも高い気温です。

お会いになる皆さんとのご挨拶は、どうしても、「寒いですね。」になります。ここ数年、毎年ご紹介していますが、英訳すると、「You might think but today’s some fishes.(ゆう まいと おもえど きょうの さむさかな)」です。

寒くなって期待するのは魚です。特に、鯛(たい)は、夏と違って美味しいです。夏の鯛は、産卵時期の所為か、身が柔らかく味も落ちるといわれています。他方、今は、寒さに備えて脂を蓄え、そして身も締まっています。

実は、K社長から採れたての鯛のアラをいただきました。アラといっても分厚い身のついたものです。一部は刺身に、他は「潮汁」にします。刺身は「湯むき」です。鱗(うろこ)を削除した後に熱湯をかける方法です。コリッとした食感に感激します。他方、「潮汁」は、量が多すぎたことで困りました。朝夕、4回も続くのです。


話は飛びますが、紀伊国屋文左衛門が遊郭でいただいたお茶漬けの具が鯛の頬っぺただったそうです。

美味しいこともさることながら、頬っぺたは、鯛の全身の極一部です。江戸中の鯛を買い占めたことから、その日の江戸には鯛は無かったと言われたほどです。

いただいた鯛は、その頬っぺたの肉も厚く、兜割り(かぶとわり)した両側を合わせると驚くほどの量です。体長90CMもあったようです。


工房ではこのところなんだかんだ手をかけています。当面の課題はペン皿とバインダーのようなものです。ペン皿の材料はケヤキ(欅)、そして、バインダーのようなものは青森ヒバです。

いずれも拭漆(ふきうるし)で仕上げるつもりです。両者とも、3色を使うつもりです。実は、この配色は歌舞伎の緞帳(どんちょう)をイメージしたものです。さまざまある中で、黒、緑、赤にします。この色使いは試しのようなものです。

実は、同一作品に数種類の色漆を使うのは初めてです。異なる色の境目(さかいめ)がどのような手順でクリアになるかが未知の世界でした。結局、まず、赤を塗ることにします。緑と黒となる部分の境目はマスキングテープで養生します。そして赤漆の拭漆です。この赤漆の拭漆を2回繰り返します。ここまでの作業で1週間を費やします。


表現は簡単ですが、実際の舞台裏には隠された作業があります。まず、マスキングテープといえども、赤漆が緑の領域まで浸み込むのです。それをコツコツと削除しながらの作業になります。

一昨日になって緑の拭漆です。そして昨日は、生乾きの中での2回目の塗りです。今日は、いよいよ黒です。赤と緑以外は黒です。その黒は、赤の上、緑の上、そして残った白木部分全てに塗ります。

この後、数回の黒漆の拭漆になります。1回目の黒漆では、まだ黒部分は期待した黒を呈していないものの、突然新しい世界が出現します。しかし、何となく見慣れた世界でもあります。

歌舞伎の緞帳の色彩には意外性があります。しかし、その配色が、昔から鍛え上げてきた「粋(いき)」の世界であるとされています。本来、薪(まき)となる筈だったペン皿が、既に、ドキッとさせる雰囲気に変貌しています。

他方、バインダーのようなものも同様の色使いにします。バインダーのようなものには、更に、皮で仕掛けするつもりです。これは、蝶番(ちょうつがい)のカバーです。また、紙を挟むためのストッパーです。勿論、初めての試みです。ま、何とかなる筈です。


2012/12/23(日) 22:44