数日前の、お勤めに出かける朝の気温は-6℃、そして日中の最高気温は-3℃です。奥州最北端の道路はバリバリと凍っています。因みに、日本北端の太平洋側の釧路は0℃と、当地よりも高い気温です。

お会いになる皆さんとのご挨拶は、どうしても、「寒いですね。」になります。ここ数年、毎年ご紹介していますが、英訳すると、「You might think but today’s some fishes.(ゆう まいと おもえど きょうの さむさかな)」です。

寒くなって期待するのは魚です。特に、鯛(たい)は、夏と違って美味しいです。夏の鯛は、産卵時期の所為か、身が柔らかく味も落ちるといわれています。他方、今は、寒さに備えて脂を蓄え、そして身も締まっています。

実は、K社長から採れたての鯛のアラをいただきました。アラといっても分厚い身のついたものです。一部は刺身に、他は「潮汁」にします。刺身は「湯むき」です。鱗(うろこ)を削除した後に熱湯をかける方法です。コリッとした食感に感激します。他方、「潮汁」は、量が多すぎたことで困りました。朝夕、4回も続くのです。


話は飛びますが、紀伊国屋文左衛門が遊郭でいただいたお茶漬けの具が鯛の頬っぺただったそうです。

美味しいこともさることながら、頬っぺたは、鯛の全身の極一部です。江戸中の鯛を買い占めたことから、その日の江戸には鯛は無かったと言われたほどです。

いただいた鯛は、その頬っぺたの肉も厚く、兜割り(かぶとわり)した両側を合わせると驚くほどの量です。体長90CMもあったようです。


工房ではこのところなんだかんだ手をかけています。当面の課題はペン皿とバインダーのようなものです。ペン皿の材料はケヤキ(欅)、そして、バインダーのようなものは青森ヒバです。

いずれも拭漆(ふきうるし)で仕上げるつもりです。両者とも、3色を使うつもりです。実は、この配色は歌舞伎の緞帳(どんちょう)をイメージしたものです。さまざまある中で、黒、緑、赤にします。この色使いは試しのようなものです。

実は、同一作品に数種類の色漆を使うのは初めてです。異なる色の境目(さかいめ)がどのような手順でクリアになるかが未知の世界でした。結局、まず、赤を塗ることにします。緑と黒となる部分の境目はマスキングテープで養生します。そして赤漆の拭漆です。この赤漆の拭漆を2回繰り返します。ここまでの作業で1週間を費やします。


表現は簡単ですが、実際の舞台裏には隠された作業があります。まず、マスキングテープといえども、赤漆が緑の領域まで浸み込むのです。それをコツコツと削除しながらの作業になります。

一昨日になって緑の拭漆です。そして昨日は、生乾きの中での2回目の塗りです。今日は、いよいよ黒です。赤と緑以外は黒です。その黒は、赤の上、緑の上、そして残った白木部分全てに塗ります。

この後、数回の黒漆の拭漆になります。1回目の黒漆では、まだ黒部分は期待した黒を呈していないものの、突然新しい世界が出現します。しかし、何となく見慣れた世界でもあります。

歌舞伎の緞帳の色彩には意外性があります。しかし、その配色が、昔から鍛え上げてきた「粋(いき)」の世界であるとされています。本来、薪(まき)となる筈だったペン皿が、既に、ドキッとさせる雰囲気に変貌しています。

他方、バインダーのようなものも同様の色使いにします。バインダーのようなものには、更に、皮で仕掛けするつもりです。これは、蝶番(ちょうつがい)のカバーです。また、紙を挟むためのストッパーです。勿論、初めての試みです。ま、何とかなる筈です。


2012/12/23(日) 22:44