
奥州最北端ではここ数日降っていませんが、東京では雪のようです。慣れないことから大変なようです。
ここ数日は漆塗りに終始しています。同じ作品に繰り返し塗っています。塗って拭き取り、乾燥させるだけです。しかし、この作業を数回繰り返すことで、ある程度の結果が得られます。これまで数百点にチャレンジしています。将来を夢見ながらコツコツとする単純作業です。
しかし、今回は、赤、緑、黒の3色の「拭漆」を試しています。結果は45点です。ペン皿はある程度期待どおりです。しかし、バインダーが見事に失敗です。この原因は、マスキングテープを使ったことによります。
剥(は)いだ後、マスキングテープの縁(ふち)の糊が微かに残るのです。当初、それを無視して、3~4回の「拭漆」を続けました。しかし、今になって修正を余儀なくさせられます。潔(いさぎよ)さの無い醜さが目に付くのです。
今日、そのやり直しを決意します。方法は、一度乾いた漆を削り取ることから始めます。小刀で削(そ)いだ後、サンダーをかけます。無残な姿になります。この、一度塗った漆を削り取る作業に、昔は重大な決意が伴ったものです。

しかし、何回か経験することで、このやり直しが慣れてきています。丁度、50m走のとき、途中でスタートラインの方に方向変換して、再び、ゴールを目指して走り直す心境に似ています。全てを失う、ということではないのです。
当初、全てを「拭漆」にするつもりでした。しかし、今回は、朱と緑を「拭漆」ではなく、「厚塗り」にしてみます。塗り直しは表紙の表側の2面です。内部の「拭漆」は健在です。ヒバの年輪は楽しむことができるのです。
しかし、この「厚塗り」にも良い想い出は少ないです。漆の「厚塗り」には「シワシワ」が伴うことが多いのです。これは、漆は、表面と内部では乾燥の速度が異なるからです。その時間差がシワシワをつくります。
その解決策として、乾燥の速度を遅れさせる方法があります。乾燥し難い環境で、内部と外部の乾燥速度を一致させる方法です。話は飛びますが、漆塗りの醍醐味は、そのシワシワを生じる一歩手前の厚さで塗ることとされているようです。
やや厚く塗った漆の表面は鏡のようで。綺麗です。これは、木地に多少の凹凸があっても、その凹部分に漆が集まるからです。しかし、心配です。シワシワが出るか出ないかは2~3日後に判明することになります。ま、不満足な結果であれば、またまたやり直せばいいだけのことです。

他方、同時進行していた「茶筒(ちゃづつ)」は順調な仕上がりを見せています。これは、金属を使っていない、木だけでつくられています。
茶筒に金属を使うのは湿気を防ぐためのようです。しかし、木だけでも、「身と蓋(ふた)」がピタリとフィットすることで、この湿気は遮断でる筈なのです。
木地の段階では「身と蓋(ふた)」には微かな遊びがあります。それが、漆をかける度ごとに、その遊びが少しずつ少なくなってきています。紙よりも薄い膜の漆でも、それが重さなることで自己主張してくるのです。
やがて、身に蓋をそっと乗せるだけで、蓋自身の重さでスーッと沈むようになる筈です。デリケートな挽物(ひきもの)です。