いつの間にか師走になり、その師走も既に半ばです。当然のことですが結構な寒さです。雪はまだ降ってはいないものの、降ってもおかしくない寒さです。外の空気が白々としています。


久しぶりに桶(おけ)をつくっています。概(おおむ)ねの部材づくりを昨日終えました。部材とはいっても、横板と底板の2種類だけです。

昔、この桶を日本固有の文化だと思っていました。おそらく、時代劇を見過ぎたからのようです。しかし実際には何千年もの昔から、フィンランド等の北欧はじめ中国、ヨーロッパ等の世界中でつくられ使われてきた歴史があります。

横板と底板を組み立て、それを箍(たが)で締め付けるだけで水を張る器が出来ることが不思議です。その単純さにクラクラするほどの大ロマンがあります。熟練のプロでなくても挑戦したくなる筈なのです。

濱田庄司(はまだしょうじ)ではありませんが、長い間受け継がれてきた文化には、贅肉(ぜいにく)が極端に削(そ)ぎ落とされているものが多いようです。その洗練された結果に美しさが見えることが嬉しいです。

桶の側面の板を榑(ふ)といいます。今日はこの榑(ふ)に、底板を嵌(は)める溝を掘る作業からです。榑(ふ)の厚さは約20mmほどです。溝の深さをその1/4の5mmほどにしました。刃径6mmのストレートビットを使いました。


溝の幅に気を使います。底板の厚さよりも大きければガフガフになります。万力で木殺し(木を潰す)をして漸(ようや)く納まる距離にしたいところです。しかし、狭ければ嵌めることはできなくなります。無理やり押し込むとパーンとヒバは割れてしまいます。そうなれば万事休すです。デリケーな世界です。

この溝掘りの際、加工する榑(ふ)にも勾配をつけることにしました。桶全体は2°のテーパーがついています。その角度が底板の納まる溝にも反映するようなのです。今回はじめての試みです。方法は榑(ふ)の上部に当て木をするだけです。両面テープを使いました。このテープは何回も使いまわしのできるタイプです。

次は底板づくりです。桶の底の直径はおおよそ8寸ほどです。幅5寸の板2枚を相決(あいじゃくり)で貼り合せることにしました。両者を板の半分の厚さで欠くことで、合せた結果は同一平面になります。・・・勿論、1/3と2/3、2/5と3/5としても良いようです。ビットの高さ調整は、端材を使っての何回もの試行錯誤になります。

次は、合せた底板を榑(ふ)に掘った溝に納まるようにカットします。溝の深さが5mmです。底板の余裕(溝に嵌るノリシロ部分)が5mm以上であれば嵌りきらないことになります。逆に、隙間があり過ぎても困ることになります。


一見単純に見える桶です。しかし、これらデリケートな世界が、熟練者でなければ桶はつくれない、といわれる所以(ゆえん)のようです。

一応の仮組みをしてみました。2次元から別世界の3次元に変化する瞬間です。結果の如何は兎も角、感激の一瞬です。結局、満足度は85%ほどです。予想以上の出来です。15%の微調整は明日の楽しみに残すことにしました。

折りしも、先ほど『金星探査機「あかつき」が失敗した』、と報じられました。何をかいわんや、です。「大成功」と評価すべきなのです。

「あかつき」が金星をまわる軌道に乗るためには不可欠の要素としてとらえるべきなのです。桶と衛星とでは次元の全く異なるものです。しかし、所謂(いわゆる、)完全無欠といわれるものとその経過は同一のものです。失敗を含めての成功なのです。

箍(たが)をトヨシにするつもりです。トヨシは当地だけの呼び方のようです。おそらく、籐(とう)と葦(よし・あし)から命名されたようです。昨日から水を張ったバケツに浸しています。

まだ決定していませんが、今回は接着剤を使わないつもりです。箍の締め付け加減が、そのまま桶全体の強度につながる単純さが好きです。

大役を担うトヨシです。勿論、箍を外すと、自(みずか)らがパラパラと解体していきます。組み立て工程とは逆の、3次元から2次元への単なる変換ですが、これもまたドラマチックな世界なのです。


向こう2日間は更に冷え込むようです。振り返ってみると、ここ数年、風邪をひいていませんでした。風邪には不愉快さが伴います。老いた今は更に気をつけたいところです。



2010/12/08(水) 18:24