奥州北端の今日(7月7日)は、気温も湿度も、顕著に高いです。過ごし難いものの、この条件は「漆工」には適しています。即、作業開始です。

実は、手がけていた対象が以前から、工作室で出番を待っていたのです。「重箱(じゅうばこ)」、「菓子重」、「弁当箱」、「お椀」等です。

「重箱」は200年ほど前から我が家に君臨していたものです。極めて優秀な「塗り」です。しかし、如何(いかん)せん、時間が経過し過ぎています。「割れ」が入っていました。

「弁当箱」は50年ほど勤務先での昼食時に愛用していたものです。これも、合わせ目に隙間(すきま)が生じています。また、「朱漆」の劣化も進んでいました。

それらの「手直し作業」は、「表面の削り取り」等、ある程度の「下拵(したごしら)え」は済ませています。残る作業は、「朱漆と生漆」の「塗り」です。

最初は、「朱漆の塗り直し」です。「漆工作業」は経験済みです。しかし、いざ、となると様々な迷いが生じてきます。

当初、「拭き漆(ふきうるし)」のつもりでした。これは、漆を「塗って拭き取る」、の繰り返しで仕上げる方法です。いわば、贅沢な「漆」の使い方です。そのため、多くの漆を要します。しかし、「手持ちの漆」の量が少なく、これを断念します。

結局、「刷毛塗(はけぬ)り」に落ち着きます。尤も、途中途中で、「拭紙で撫でる」程度の調整過程は取り入れます。

この高温多湿の条件下です。薄い刷毛塗後数分で朱漆は乾いていきます。数度の塗り重ねで要した時間は、ほんの1時間半ほどでした。今後の作業予定は、このまま数日置いた後、仕上げ工程の、「生漆」の「拭き漆」です。

7月7日は、亡父の誕生日です。また、昔、古典の教科書で読んだ記憶もあります。玄宗皇帝と楊貴妃を詠った、白楽天の「長恨歌」の後半に載っていた筈です。

55年も昔のことです。昨日今日のことの記憶は残っていなくても、昔の記憶は残っているのが不思議です。

『・・・七月七日長生殿 夜半無人私語時 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝 天長地久有時尽 此恨綿綿無絶期・・・』


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2025/07/07(月) 12:37