暑い中、ふと、65年ほども昔の冬を思い出しています。場面は、通っていた高校の教室です。昇降口の2階にあるだけに、だだっ広い教室でした。冬季間の暖房は、教室の一角におかれた大きい「薪(まき)ストーブ」だけでした。
席は、前から阿部、石川、石田・・・の「あいうえお順」でした。筆者の席は窓側の前から4番目です。黒板に向かって左側のその席は、吹雪ともなると、窓の隙間から侵入した雪が机上に積もり、時々、手で払っていました。ストーブの位置は黒板側の右側の後方でした。
ギリギリと冷える或る英語の時間、先生がニヤニヤしながら、黒板に「You might think but today’s some fishes.」と書いたことがありました。しかし、誰もそれを「訳す」ことはできませんでした。
クラスの英語能力が貧困であったからではありません。筆者は極めて劣等でしたが、中には東大を目指すものが数人もいたのです。簡単なスペルの文章です。訳せないことはなかったのです。しかし、誰にも無理でした。
訳せないことを見極めた先生が、やがて、『それでは訳してみましょう。』、『言う(You) まいと(might) 思えど(think but) 今日の(today’s) 寒(some)さかな(fishes)。』と、滔々(とうとう)と語ったことがありました。
意味は、「寒い」と口に出して言っても、「詮(せん)無い(どうしようもない)」ことだ。それを解っているのに、つい、「寒い」と言ってしまう。でした。単なる「駄洒落(だじゃれ)」だったのです。
それと同様、この暑さの中、「You might think but today’s at fishes.( 言うまいと思えど今日の暑さかな)」と言いたい日々が続いています。つい、「暑い」、と言ってしまう自分の愚かさに悲哀を感じている昨今です。
先日、アメリカ大リーグ、ドジャースの戦いをテレビ観戦しました。O選手のホームランの如何(いかん)はじめ、脱三振3000のかかるピッチャーいたり等の試合でした。試合展開は、やはり、劇的でした。結果は、9回裏2点差での、後攻のドジャースの逆転勝利に終わりました。
会場のドジャースタジアムには6~7回ほど行ったことがあります。客席最上階の入口には、小高い丘の駐車場から入った記憶があります。入って間もなくの右側に売店があった筈です。扱っていたのは野球関係のグッズです。
当時、「NOMO」の入ったユニフォームが販売されていました。野球文化、というよりもスポーツ全般に疎(うと)い筆者は、当初、そのユニフォームを何に使うのか解りませんでした。最近になって、それを着て応援することを知ります。
前後しますが、球場のつくりに驚きました。観客席の階段が、絶壁のように急勾配なのです。躓(つまづ)くとグランドのホームベースに落ちるほどです。
「おっかない、ですね。」と現地職員に言うと、『そうです。しかし、売り子さんはこの中を飛び回っています。ビビっていてば商売にならないのです。』と話していました。
また、日本の試合と違うことにも気づきました。高校野球では、7回は一休(ひとやす)みします。その時間帯に「応援合戦」や「校歌斉唱」があります。他方、アメリカの7回は、スタンド全員が立ち上がり『Take Me Out to the Ball Game(私を野球に連れてって)』を歌います。
これは、「Seventh inning stretch(7回のストレッチ)」として1908年から行われているアメリカ野球の文化です。尤も、テレビではこの場面はカットされています。何(いず)れにしても、7回は「一休み」の回です。
試合を観ながら、カリフォルニアのドジャースタジアムを思い出しています。