今日は、時折の濡れ雪、時折、陽光の射す日です。「秋」であれば「小春日和(こはるびより)」、というあたりでしょうか。「良き日」というべき、のようです。勿論、今朝の「除雪作業」は無し、でした。
前回のこの日記で、上皇后美智子の「短歌集」についてご紹介しました。その一首、
『少年のソプラノに歌ふ「流浪の民」この「歌」を愛でし少女ありしを』
について補足させていただきます。
「少年」というのは、或いは「ウイーン少年合唱団」で、「少女」というのは「横田めぐみさん」のことのようです。彼女は、小学校の卒業謝恩会で、このソロパーツを担当したとのことです。
折角の機会です。石倉小三郎訳の「流浪の民」をご紹介させていただきます。戦後の小学校「2年生のおんがく」に載っていた合唱曲の代表でした。
(合唱)山毛欅(ぶな)の森の葉隠れに宴(うたげ)寿ひ(ほがい)賑(にぎ)はしや/(合唱)松明(たいまつ)あかく照らしつつ木の葉(このは)敷きて倨居(うつい)する/(合唱)これぞ流浪の人の群れ 眼(まなこ)光り髪(かみ)清ら/(合唱)ニイルの水に浸されて 煌(きら)ら煌(きら)ら輝けり/(ソプラノ)焚火(たきび)囲みつつ/(アルト)赤き焔(ほのお)めぐりめぐり/(テノール)焚火囲みて男(おのこ)やすらふ/(バス)焔(も)ゆる火を囲みつつ強く猛(たけ)き男(おのこ)息(やす)らう/(合唱)女(おみな)立ちて忙しく酒を酌みてさしめぐる/(合唱)唄い騒ぐその中に南の邦(くに)恋ふるあり/(合唱)厄難(なやみ)祓(はろ)う祈言(ねぎごと)を語り告ぐる嫗(おうな)あり/(ソプラノ)可愛(めぐ)し小女(おとめ)舞ひ出でつ/(アルト)松明(たいまつ)赤く照り渡る/(テノール)管弦の響き賑はしく/(バス)連れたちて舞ひ遊ぶ/(ソプラノアルト)既に歌ひ疲れてや/(テノールバス)眠りを誘ふ夜の風/(ソプラノ)なれし故郷をはなたれて 夢に楽土(らくど)求めたり/(合唱)なれし故郷を放たれて 夢に楽土(らくど)求めたり/(合唱)東(ひんがし)空の白みては夜の姿かき失せぬ/(合唱)ねぐら離れ鳥鳴けばいづこ行くか流浪の民/(合唱)いづこ行くか流浪の民 いずこ行くか流浪の民 いずこ行くか流浪の民 流浪の民
〇寿ひ(ほがい)~祝って、寿(ことほ)いで。 〇倨居(うつい)~うずくまっている。〇ニイル~Nil(エジプトナイル川) 〇嫗(おうな)~老女。 〇祓う(はら)う~悪いものを追い払う。 〇祈言(ねぎごと)~いのりごと。 〇可愛(めぐ)し~かわいい。 〇楽土~安住の地。 〇南の邦~エジプトorインド北部?
妃殿下の「歌」は、この「シューマンの歌」と「めぐみさん」を重ね合わせた作品のようです。そして、その「傷(いた)み」を「歌」に「詠(よ)」んだもののようです。
だとすれば、宮家・妃殿下と一般国民との感情の隔(へだ)たりを感じさせないものです。今朝は、それら、さまざまな思いの中、「流浪の民・合唱曲」を、20回ほども聴き入ります。