朝食前、数方がお見えになります。来週の「展示会」の打ち合わせです。実は、数年前から、この展示会に出品しています。

さまざまな価値観の多くの皆さんに、自分の現状を曝(さら)け出す機会です。非常に恥ずかしいものです。その羞恥心をかなぐり捨てての出品です。還暦をとうに過ぎての自己防衛は、大人げないと判断した結果です。

今回出品する作品の中に、「花台」があります。「糸巻」をデザイン化し、朱漆で仕上げています。その「花台」に、実際に、花を飾ることにしました。小さい鉢に剣山を使って活(い)けるつもりです。

そのことをK女史にお話しします。彼女が作品をまとめる係りです。すると『適当な鉢があります。しかし、台が無いのです。』と言います。即、「つくってみましょう。」と安請け合いをしてしまいます。


材料を「イチイ(オンコ・一位)」にします。先日、製材所のY社長からいただいたものです。その一端をつかうことにします。

単にジグソーでカットし、表皮を削り取り、そして形を多少整えるだけです。当初は簡単にできる、と考えていました。

本来、「イチイ」は密度が濃く、それ自体が艶(つや)を持っています。仕上げは、「クルミ(胡桃)」や「アマニユ(亜麻仁油)」等の植物油をオイルフィニッシュとして使うつもりでした。

ところが、実際には結構厄介です。「アマ(腐り)」が入っています。本来は、この「アマ」を削除した後に現れる自然の形やラインを生かすべきです。このラインには、人の手ではとても作り出せない、自然の造形美があります。極めて大胆で、そして繊細な美しさです。

しかし、このアマを取り除くには相当な時間を要しそうです。妥協することにします。プログラムが少しずつ変化してきます。植物油だけでは、アマのザラザラ感を落ち着けることは難しそうです。結局、「漆仕上げ」になります。


台に脚(あし)をつけることにします。ほんの4mmほどの高さの脚です。この取付けは、トリマーで溝を掘り、別の材を埋め込む方法にします。

定規(じょうぎ)は、適当な板を「両面テープ」で貼り付けるだけです。これまで何回か経験してきた内容です。実際の作業は、ほぼ一瞬です。

次は、全体の磨きです。結構頑張って磨きます。この段階のイチイは、丁度、焼く前のステーキに似ています。アマの白い部分が脂身です。まあまあ、です。

しかし、漆を塗ると不満足な箇所が浮上してきます。もっともっと削除すべき箇所があるのです。これだけはセンスの世界です。落ち着いてから手直しすることになります。

『ケヤキ(欅)には漆が似合う。』、『イチイに塗装を施すには勿体ない。』と言われています。しかし、「イチイと漆」のコントラスト(contrast)も見事です。

或いは、contrast(対比) というよりも、compatible(相性)が適語なのかも知れません。表皮を削る前と漆をかけた後とのcontrastが劇的です。


早朝、K社長が、鯉(こい)に餌(えさ・食パン)をやっています。声をかけて、「額」の進捗状況をご報告します。つい昨日塗った漆の様子をご覧になり感激してくださいます。

しかし、本番はこれからです。さまざまな事情をかい潜(くぐ)りながら、是非、満足する作品に辿(たど)りつきたいところです。

2013/07/17(水) 12:47