朝食後、「日展」に出かけます。会場は、奥州最北端津軽のH市です。高速道路を使って、片道1時間ほどです。

会場に着いたときは、ポツリポツリとした雨でしたが、帰りには豪雨になっています。久しぶりに小気味の良い雨に会います。しかし、帰宅すると、降ってはいますが弱雨です。

日展会場は順路が指定されています。はじめに日本画、そして、洋画、彫刻、工芸美術、書のジャンルの順になっています。目当ての工芸美術のコーナーは出口近くです。じっくり観賞します。他は、時間をかけて拝見できませんでした。

絵画は皆、相当な時間をかけた力作です。数点に見入ります。メインの工芸美術にも、惹きつけものがあります。特に、H県のO女史がつくった、題名「昴(こう)」です。所謂(いわゆる)オブジェ(objet・仏)のようです。造形が素晴らしいです。

見た瞬間、「朱漆」で仕上げたものと感じます。実は、工房KUROOBIも、この「朱漆」で仕上げる「糸車」を手掛けています。筆者の場合は、その「縮(ちぢみ)」に悩まされています。(名にし負う)「日展」出品の作品は、どの次元で妥協しているかを確認したかったのです。

話は飛びますが、この「名にし負う」は、在原業平(なりひら)が「伊勢物語」に残した『名にし負はば いざ言問はむ都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと』からの引用のつもりです。日展に出品する、というのは、一般人にはそれだけの敷居の高さがあるものです。


さて、「朱漆仕上げ」であれば、必ず?「縮」の痕跡が残っている筈だ、という目で、顔を近づけて見ます。すると、やはり、あちらこちらにあることに気づきます。ところが、1mも離れて見ると、殆ど気づかないのです。

ここで、いくつかの考え方に迫られます。例えば、「どうして完璧をめざさなかったのか。」という疑問です。「日展への出品作品を、この程度で妥協しても許されるのか。」という、意外性です。

しかし、「完璧を期すことが、逆に、作品の重みを失わせることになるのではないか。そのため、敢えて、雑な部分を残したのかも知れない。」とも考えられます。あるいは、素人には考えの及ばない世界であるのかも知れません。

ただ、、あれやこれやの疑問の中で、あらためて気づくのは、如何に「塗師(ぬし)」の技が優れたものであるか、です。何気なく普段の生活で目にする漆器ですが、実際に素人がそれをつくってみると、如何にハイレベルな作品であったかに気づくのです。

展示されている作品数は300弱のようです。その中の特選は40数点です。惹かれた「昴」は、やはり、特選でした。

結局、ホッとします。実は、我が「糸車」も完璧ではない段階なのです。そして、1mも離れて見ると、それなりに映り、ワイルドさを表現しているようにも思えてくるのです。絵画もそうです。近づいてみると、まさか、という部分に、雑とも思える色を使っています。それが、離れて見ることで、極めて自然に映るのです。という考え方です。

作品を絵葉書にした数枚を求めます。尤も、先ほどの「昴」の他に「宇樹奏」と「逍遥・十六夜」の3枚だけです。帰宅後、即、額に入れてみます。何れも満足します。しかし、「宇樹奏」は、全体が暗すぎるものです。

実は、この作品は、本体を収めている漆黒の額(屏風)のために求めたものです。見事でした。


夕刻の一時、工房に入ります。まず、「拭漆の箸置」をカットします。30個ほどのつもりでしたが、外に出せるのはほんの20個程度です。よくよく見ると、斑(むら)や拭き紙の名残(なごり)が付着しているのです。

その後、「鉞(まさかり)」づくりに挑戦してみます。数日前から、というよりも、ここ数年来の課題であったものですす。

今日が第一作目です。そのこと故、今日は、単に、様子を確認するためだけがテーマです。まず、凡その形を描き、ジグソーで切り取ります。それをベルトサンダーで修正するだけです。

実際の作業時間は5分程度です。簡単に出来たことで、逆に、作品の発する説得力もまた弱いようです。つくっている途中、「自分は、一体、何をしているのか。」と自問させられます。

「木のマサカリ」をつくっているのです。しかも、簡単な作業に、本気になっていることが可笑しいのです。しかし、長い間、あたためてきた課題です。続行します。柄(え)を、取り敢えず、竹にします。先日、「菜箸(さいばし)」として、安価で売られていたものです。

しかし、少しでも、本物に近づけるのが基本です。竹ではなく、木、が良さそうです。それも、ゴツゴツ感を表現できるものです。また、大きさや、刃の厚さ等の、あれやこれやの、反省点が浮かんできます。

これからは、センスの要求される世界のようです。しかし、試行錯誤により、何とかなりそうでもあります。失敗すれば、また、試みれば良いことです。

雨は、暗くなるまで、ダラダラと降り続いています。


2013/07/05(金) 19:18