このところ、「下駄(げた)」づいています。ここ数日で、大小合わせて数足つくっています。午後もまた「下駄」づくりになります。

実は、『一本歯をつくれ。』という注文があったことを思い出したのです。依頼されたのは数年前です。同級生のY君からのオーダーです。

Y君は、毎年、市内のU神社の祭りで天狗の役を演じています。その時に履く「一本歯」です。この機につくることにします。

作業は簡単です。厚めの板をそれなりにカットし、歯を挿し込むだけです。しかし、これまで、その瞬時の時間でさえ、確保ができなかったのです。

今日は時間があります。自分で使う歯の差し換えを終えたことで、満足感に浸っているところです。即、作業開始です。

話は変わりますが、これまで、「一本歯」を「一枚歯」と表現していました。しかし、よく考えてみると、「歯が一枚抜けた。」ではなく、「一本抜けた。」と表現するのが、昔から一般的です。やはり、「一本」が正解のようです。

またまた話は飛びますが、昔、襖(ふすま)や戸の「開け閉め」を、「あけたて」と、お袋が表現していました。しかし、この数十年、「あけたて」という言葉を聞いたことが無いのです。今日放送された「古民家」の紹介でも、「あけしめ」と表現しています。


今は、「下駄」も履いた経験の無い世代になっています。また、「襖」の無い家も多くなっているようです。「鼻緒を挿(す)げる」の「すげる」も、「あけたて」同様、今は死語になっているのかも知れません。

下駄では自動車の運転は無理です。都会に限らず、田舎の奥州最北端であっても、下駄を履いている人を見かけるのは難しいです。何千年も育てられてきた文化が、一瞬で消えるのも無理からぬことであるらしいです。

さて、「一本歯」は初めてつくります。まず、「歯」の位置の確認です。調べてみると、台の中央のあたりにあります。これだけ解かれば、あとは簡単です。しかし、台と歯は「大入れ接ぎ」です。やはり、オスとメスの寸法には気を使います。

両者の収まりを、ややキツくなるように加工します。しかし、これを嵌(は)め込むのは大変な作業です。短い歯であれば「万力(まんりき)」でジワリジワリ、そしてビシーッと挿し込むことができます。

しかし、今回は高い歯です。この段階で玄能は使いたくないところです。さればといって、非力な腕力では到底無理です。少し考えます。結局、昔、同じような加工の際につくった「ジグ」を使います。

ラチェットレンチで締め付けるものです。螺子(ねじ)は意外なほど強力です。殆ど、期待した結果が得られます。いつもは邪魔になるジグですが、いざ、というときには活躍してくれるのです。


粗末な向きはあるものの、何とか組立を終えます。問題は「塗り」です。当初は、天狗らしく、「朱漆」で仕上げるつもりでした。

しかし、Y君は、『折角の青森ヒバです。無塗装にしてください。』、と言っていました。それを尊重することにします。

結局、台の上面は無塗装、そして、他は「木固めエース」で仕上げることにします。これで、足のカタが台に残り、他につく汚れは拭き取ることができます。全体が「飴色(あめいろ)」に変化する趣向です。

何よりも、素足に接する面は、カタはついたとしても清潔です。(名にし負う)秀木の「青森ヒバ」です。仮に、ノロウィルスであっても、一晩で死滅させる力を持っているといわれています。

U神社のお祭りの行列は9月です。鼻緒挿げは折を見て、になります。しかし、できるだけ早くお届けするつもりです。数年前に依頼されたものが、いよいよ履行されることになります。


2013/06/26(水) 18:31