H氏が当県にお見えになっています。福井県の漆問屋の方です。2ヶ月に一回、さまざまな情報を持ってきてくれます。今回もいくつかの課題を解決していただきます。

実は、先般、「拭漆(ふきうるし)」で「手拭受(てふきうけ)」をつくっています。「お絞りのトレイ」です。材料は「青森ヒバ」です。漆も青森ヒバも抗菌力が強いことから、最適と思ったのです。

因みに、青森ヒバに漆を施した「重箱」に「ノロウィルス」を入れると一晩で死滅する、といわれています。この「手拭受」はサンプルの段階です。素性(すじょう)の良い材を「外丸鉋(そとまるかんな)」で仕上げています。意外に簡単な作業で加工できました。

しかし、若干の憂いがあります。黒くなり過ぎて、目論(もくろ)んでいたヒバの木目(もくめ)が隠れて、地肌を表現できなかったのです。木地(きじ)が漆を多く含み過ぎたようなのです。

この状況をH氏に相談します。すると、『漆は直射日光で色が上がります。試に、お日様にあててみてはどうでしょうか。』と教えてくれます。このところの晴天です。早速お日様に晒(さら)してみます。午後の半日で期待通りに仕上がります。感激すること頻り(しきり)です。

漆の世界では、色が「落ちる」でなく、色が「上がる」と表現しています。丁度、「スルメ」を「アタルメ」と表現するのに似ています。「笏(こつ)」を「しゃく」と読ませていることにも似ているようです。


奥州最北端とは雖(いえど)も、流石(さすが)に今日の工房は暑いです。少しの時間で集中力が鈍ってきます。今日の「糸巻」づくりは、四阿(あずまや)で行うことにします。外は暑いのですが、四阿の中は不思議に涼しいものです。

「糸巻」の試作を思いついたのは3日ほど前だったようです。普通?であれば2時間ほどで完成できる筈のものです。しかし、ダラダラとした進捗(しんちょく)です。制作の第一の目的は楽しむことと心得ているのです。

その中には、工夫や数字との触れ合い等も含まれます。今回は、紙と筆記用具を手元に置きます。計算は微分積分のレベルではなく、2数の加法と減法、そして2での割り算です。

簡単な計算ですが、その結果は頭の中にメモする年齢ではなくなっています。紙に残した方が効率的です。

昔から傾向はあったものの、この記憶力の衰えに少しでも歯止めをかけることが、作品づくりの目的でもあります。ま、頭と腕力のトレーニングのようなものです。

今回予定したパーツの数は12です。すべてホゾ組にします。そのホゾとホゾ孔も12ヶ所ずつです。昨日の「決り(しゃくり)」を含めると20ヶ所です。単純なホゾ孔ですが、「角鑿(かくのみ)」が故障していることで、手作業になります。


ドリルで大雑把に孔をあけた後に鑿(のみ)を使います。結構な時間と集中力を要する作業です。

時折訪れる爽やかな風を楽しみながらコツコツと作業します。いつものことですが、鑿と金槌(かなづち)を使っていると、本物の大工さんになった錯覚に陥ります。幸せを感じる瞬間です。

ホゾ加工の後、早速(さっそく)、組立ててみます。18ヶ所を順番に組立ていきます。結果は、予想した範囲のものです。自己採点では、100点満点の65点ほどです。ま、こんなものです。

次回は、これを再び分解し、まず、面取りです。これは、鋭い稜角の鈍角化です。その後、塗りに入ります。実は、これまでは、組み立ててから面取りや塗りをしていました。今回は、この作業工程を入れ替えることになります。

組立て後の塗装は、えらく大変なのです。特に、2面が出会うコーナーに漆が溜まる傾向があるのです。H氏も、『複雑なものは、パーツごとに塗ることが効率的です。』と言っていました。初めての試みです。面白そうです。

2013/06/13(木) 18:53