「椅子づくり」を楽しんでいます。カンナ(鉋)がけを終え、各パーツの寸法にカットしています。今日は、いよいよ「墨付け」です。これは、ホゾ孔の位置決めです。

以前は鉛筆で印をつけていました。しかし、我が工房には芯先の鋭い筆記用具が無く、丸くなったものばかりです。芯の鈍い鉛筆を定規にあてて線を引いても正確な位置にならないことが多いです。


今回のホゾ加工には、どうしても正確さが要求されます。結局、使ったツールは「しらびき(白引・白柿)」と「けびき(毛引・罫引)」です。何れも昔から伝わるツールです。

しかし、今の時代、「白引」という名前を知る人は多くはないようです。別名「白柿」ともいうようです。かくのたまう筆者もまた、数年前、木工仲間のI氏からいただいたときに初めて知ります。彼も首都圏から求めてきたようです。奥州最北端では入手の難しいもののようです。

そして何よりも肝心なのは位置をきめるための道具です。一般的にはメジャーを使うのですが、細かい目盛を何回も読む歳ではなくなっています。仮にメジャーを使っても、同じ場所を何回も確かめる羽目になります。それでも計るたびごとに異なる場所に印をつける有様です。



使ったツールは「バカ棒」です。予め(あらかじめ)、別材を必要な寸法にしておいた単なる棒です。

一旦「バカ棒」を設定することで、目盛を読む必要がなくなります。すこぶる優秀なツールですが、失礼というべき「バカ」がついています。この名前の所以(ゆえん)は、考えることもなしに正確な結果が得られることに由来しているようです。

この名前と優秀きわまりのない能力の、両者の隔たりについ苦笑してしまうほどです。特に今回は、同じ寸法の部材の同じ位置に印をつけることになります。結局、数種類の「バカ棒」をつくります。

くどいようですが、「白引」には2種類あります。一般的な刃は右側についています。右手に「白引」を持ち、左手で「バカ棒」を支えて使うものです。他方は、刃が逆についています。素晴らしい文化遺産のひとつです。

体重を乗せる椅子です。対応する位置が異なれば斜めになります。ホゾと孔の大きさが一致しなければグラつきます。今回の「墨付け」にはある程度の正確さが要求されます。作品の出来の全てを決定づける工程のひとつです。

このようなツールを使っていると、昔の大工さんになった錯覚に陥ります。腕の巧拙は全く関係なく、その実感が湧いてくるのが不思議です。大ロマンの世界に浸ります。コツコツと楽しむつもりです。

2013/04/30(火) 18:58