今日は日曜日です。垂れ下がっている雪庇(せっぴ)が気になっていました。しかし、昨日の暖気で工房の屋根雪は轟音を発しながら滑り落ちます。

気をよくして朝から工房作業です。まず掃除です。端材の整理と整頓、そして工具の整理、その後は床に堆積した大量の大鋸屑(おがくず)を掃きます。ほんのこれだけで3時間も要します。

しかし、掃除を終えた瞬間には創作意欲が湧いてきます。いつものことですが不思議な現象です。即、「椅子」の手直しに没頭します。これは半年ほど前に手がけたものですが、不満足な加工になっていたものです。

不満足部分はホゾ加工の幼稚さです。オスとメスの嵌めこみに若干の隙間が生じていたのです。拙い加工技術によるものです。外に出せないことから工房の隅に追いやられていたのが掃除によってクローズアップされたのです。

腕の拙(つたな)さははじめから承知しています。手直しは憚(はばか)る勿(なか)れ、です。結局、漆(うるし)をかけることにします。まず、隙間を簡単な「刻苧(こくそ)」で埋める作業です。

「簡単な刻苧」というのは、生漆(きうるし)に青森ヒバの微粉末を混ぜ合わせたものです。本来の刻苧(こくそ)は、糊、木粉そして生漆を混ぜ合わせたものです。その糊を使わないパターンです。

勿論?自己流です。話は飛びますが「糊漆(のりうるし)」というものもあります。これは糊と同量の生漆を混ぜたもののようです。


簡単な作業ですが結構な手間を要します。それは木地の「養生(ようじょう)」です。これは不必要な部分に刻苧(こくそ)を触れさせないためです。如何に刻苧といえども白木は漆を吸い取るのです。その結果、やがて全体に漆をかける際に斑(むら)になる心配があります。

「養生」はマスキングテープで行います。4ヶ所のホゾ組の手当ては32ヶ所になります。手間のかかる作業は楽しみながらに限ります。丁寧な養生とそうでない場合では全く異なる結果に至るものです。

養生が済んでから木箆(きべら)で刻苧(こくそ)を隙間に埋め込んでやります。そして3時間ほど経ってからマスキングテープを剥(は)いでやるだけです。あとは乾固を待つだけです。今の時期では1か月ほどもかかりそうです。空気が乾燥しているからです。

折角の待機時間です。有効活用することにします。「螺鈿(らでん)」です。とはいうものの、今回は「簡単バージョンの螺鈿」です。実は、この椅子は風呂場用のつもりでしたが、幼児用の椅子としても使えそうなのです。

デザインを「丁子(ちょうじ)」と「打ち出の小槌(こづち)」にします。いずれも、昔から宝物とされているものです。これは、先般、友人のH氏からいただいたものです。それを活用することにします。


本来?の螺鈿は、その形に木地を掘って埋め込むようです。今回の「簡単バージョン」は、単に生漆を接着剤にして平面の木地に貼り付けるだけです。やがて乾固後、貝の出っ張ったコーナーに漆を載せ重ねることになります。これは木地全体の拭漆と並行する作業になります。

今は漆を被った得体の知れないものです。しかし、やがてサンダーで磨くことでキラキラとした鮑(あわび)の輝きを放つ筈のものです。仮に制作過程ではDARK DUCK(ダークダック)に映ってはいても、SWAN(スワン)の遺伝子は白鳥に至る筈なのです。それを信じての手直しです。


今日は3月4日です。奥州最北端に「はやぶさ」が来て1周年記念行事がありました。夕刻のテレビには「帆立汁(ほたてじる)」だけが紹介されていましたが、例の「手湯桶」もまた活躍したようです。

しかし、ハプニングがあったようです。番町さんから『2荷のうちの1荷が洩りました。』との報告があります。然(さ)もありなん、です。桶は使う2~3日前から水を張っておいて使うものです。水が木を膨張させて微(かす)かな隙間を埋めるのを待つのです。次回使うのは今月の半ばのようです。問題は無い筈なのですが・・・。

2012/03/04(日) 19:07