
薄曇り中、往復700kmの宮城県に出かけます。日帰りの研修旅行のつもりです。いつものことですが、東北自動車道は恐縮するほど空(す)いています。奥州最北端と盛岡間は特にです。
やがて盛岡を南下すると車の数は少し増えます。しかし、宮城以南と比べるとまだまだ貸切状態です。空いています。よく解かりませんが、交通量が経済活動と相関関係があるとすれば、納得できなくもないところです。
高速道路を走ることには楽しみがあります。緑の中に浸れること、そしてそれぞれに特有な山並みと出会うことです。家を空けた時間は8時間です。7時間は車の中、そして1時間が研修です。
ということで、今日の工房活動は朝一番の1時間ほどです。テーマは漆の塗りです。数点に拭き漆です。塗りを待っている作品がたくさん控えているのです。まず、「弁当箱」とティースプーンです。4~5回目になっている筈です。

「筆箱」は、昨日、簪(かんざし)を挿(さ)して目地調整をしています。拭き漆は今日が初日です。いつものように、漆に若干のテレピン油を混ぜます。拭き漆は、単に塗った漆を拭き取る方法です。
これを数回繰り返すことで透明感と艶(つや)が出ます。しかし、初回の塗りが肝心です。可能な限り、木部に浸透させることです。それを助けるために生漆にテレピン油を混ぜ、粘度を低くします。目には見えない舞台裏の配慮です。
今回の木地はケヤキ(欅)です。拭き漆に最も適した素材といわれています。木の目が浮かび上がるところが嬉しいのです。
今回の課題はそのケヤキに桜の皮の象嵌です。結果のほどは実際に試すに限るのです。暫らく様子をみることにします。
日中お邪魔した先で、この樺細工(かばざいく)を拝見します。今挑戦している世界だけに不思議です。さまざまな形の木地に貼り付けているところに工夫の跡とモガキを窺うことができます。200年間の軌跡です。

作品づくりに必要な要素は何をどのようにつくるかのビジョンの設定にあるようです。しかし、それとともに、作者自身の品性にも関係しているようです。
仮に、如何に幼稚な加工技術ではあっても、魅力のある作品はあるものです。結局は如何に人間性を磨くかに負われているのかも知れません。
そのセンスを克服する特効薬はこのモガキだけのようです。やはり血を流さなければ納得する作品には辿(たど)りつけないのかも知れません。