
日中は雨はなく、明るい曇り空です。朝、K社長がお見えになります。『ねぶたが届きます。手伝ってください。』、ということです。
このねぶたは第三代ねぶた名人の佐藤伝蔵氏がつくったものです。長い間、T旅館の玄関に置いて全国に紹介していたものです。しかし、時間の経過とともに色が褪(あ)せ、今回、全面張替えを依頼していました。
手がけたのは佐藤伝蔵氏から指導を受けた北村隆氏です。最優秀作品を何台もつくっている、現在のねぶた師の第一人者です。イギリス大英博物館に展示されている「聖人 聖徳太子」は北村氏の作品です。
修復したねぶたは「不動明王邪破の剣」です。その面(おもて)は「ねぶたの家」の「見晴台」コーナーに展示されています。炎や剣等の全体を表現したものはT旅館だけに残っています。
話は飛びますが、「邪破の剣」というのは不動明王や文殊菩薩が持つ「降魔の利剣」です。またまた話は飛びますが、この剣は、奥州最北端のA高校の応援歌(凱歌(がいか))にも登場しています。
『甲田山頭雲晴れて/我が軍勝てり嗚呼(ああ)勝てり/降魔(ごうま)の刃の閃きに/敵の頭は地に落ちぬ・・・』です。懐かしいです。
仕上がった作品をみて驚きます。佐藤伝蔵の作風を忠実に再現しているのです。それは、人形もそうですが、自筆で書かれた「不動明王邪破の剣」の標題とサインも、です。貼りなおしている紙に書かれていることが不思議でした。
即、訊(き)いてみます。『よくお訊(たず)ねしてくれました。実は、最も苦心したところです。』、と舞台裏を解説してくださいます。発想もさることながら、その制作意欲に敬服するところです。その他、さまざまな裏話を教えて下さいます。
実は個人的な見方ですが、作品本体よりも筆を使った文字が素晴らしいです。棟方志功の字もそうです。手本として毎朝拝見しています。粗末な筆を使っていますが、素人には真似のできない文字です。
さて、工房KUROOBIでは日課の作品づくりです。旅行プログラムの「大人の休日」が始まっています。催促される有様です。しかし、それとは別に、新しい世界に踏み入りたくなります。「樺細工(かばざいく)」を試すことにします。「樺」とはいうものの、実際には「サクラ(桜)」の皮をつかったものです。よく解かりませんが、古い昔、サクラをカバと表現していたのかも知れません。
「白樺(しらかば)」とダブルところが、「樺細工」を曖昧(あいまい)とさせる所以(ゆえん)のようでもあります。秋田県が本場のようです。昔から見馴れたものです。
その曖昧さを払拭(ふっしょく)するための試みです。勿論、失敗することを目的としています。簡単に成功するのであれば面白くないのです。
単にやってみることで理解する筈なのです。あーでもない、こーでもない、という事前の講釈よりも遥かに優先する基本姿勢のようなのです。
材料の皮は確保しています。今年の春、看板の柱に山桜を使いました。その折、綺麗に剥けた皮が勿体無く、乾燥させていたのです。春の樹木の皮は簡単に綺麗に剥(む)けるのです。半年ほど陰干ししています。
本来は、「2年」ほどは乾燥するようです。しかし、今回は様子を窺うために、即、行動開始です。半年、というものの、実際には、ガツン、ゴリゴリと硬化しています。そして凹凸を含んで歪んでいます。
まず、そのゴリゴリの削除です。実は、当初、この表面が作品に貼り付ける状態になることが理解できませんでした。やはり、削り取る以外にはなさそうです。試しに、粗い目のディスクグラインダーをあててみます。
ザッと撫(な)でるだけで、茶筒等で見馴れたサクラの皮の表情が現れます。感激の一瞬です。グラインダーで丁寧に削り落とし、その後、360番、400番で滑らかにします。サクラの表皮は木と直角の方向に磨くのが良さそうです。次に、歪(ゆが)みの修正です。実は、仮に成功した暁には、これを箱等に貼り付けるつもりです。アクセントのためです。平面に修正します。
ツールは、蒸気の出ないアイロンです。最高の温度にし、体重をかけながら優しくプレスします。表裏を数回繰り返すことで期待以上に平面になります。
これにも感激です。しかし、プレスの際、うっすらと水分が出ます。半年では蒸散しきれなかった水分です。この時点で、「2年」の意味を理解します。
煎餅(せんべい)状態になったものに、更にサンダーをかけます。グラインダーの跡が残っているのです。ま、ここまでくれば何とかなりそうです。これからはパッチワークを楽しむことになりそうです。
2011/09/05(月)
19:27