
「園芸事情」・・・たつ沢
緑の事情が日一日と変化しています。人力ではブレーキをかけることの出来ない力強さと確実な進捗(しんちょく)です。絶え間なく移り変わっている季節を実感します。
草花が次から次に芽を出して花をつけています。蕗(ふき)は既に腰の高さにまでなっています。それぞれが、それぞれに応じたタイミングを見計らって変化しているようです。
木々はまだ芽吹前のもの、芽吹いているもの、既に花をつけているもの等さまざまです。例年、合歓(ねむ)は遅い芽吹きです。それよりも遅いのはケヤキ(欅)です。
カエデ(楓)は今が最中です。赤い葉の紅葉(もみじ)が開き始めています。下から見上げると青空が赤い葉に透けて見えます。
「タツサワ(たつ沢)」は花をつけています。三夕(さんせき)の歌で知られる西行法師の歌に織り込まれた紅葉(もみじ)です。
「工房事情」・・・石突き槐(えんじゅ)で簡単な杖(つえ)をつくることにしました。「転ばぬ先の杖」の諺(ことわざ)がありますが、それとはニュアンスの異なるものです。腰の不調法なものにとっては「痛さの緩和」のつもりです。
一般的な杖は、アメリカではcaneのようです。シャーロックホームズのイギリスでは(walking) stickのようです。日本のステッキの語源のようです。これらは柄(え)の無いものを指すようです。
曲がった柄のついたものが「crook(曲がったもの、不正直な人)」で、更に、魔法の杖となると「a magic wand(しなやかな枝・指揮棒)」だそうです。
しかし、今回の形は、T字型のインカ文明バージョンです。英語でも日本語でも何と表現すべきかが解らないでいるところです。
とりあえず「杖」としておくことにします。その「杖」のおおよそを昨日つくり終えました。しかし、その後あらためて考えてみると、結構な奥行きがあることに気づきます。単なる杖とはいかなくなってきたのです。
まず「石突き(いしづき)」からです。クラシックな名前ですが、これは杖の先につけるものです。今は「杖先ゴム」等の名前が一般的のようです。
実は、この役割を明確に理解していませんでした。考えていたころ、友人がお出でになりました。タイムリーでした。
彼の言は『何かをあてなければ杖本体が痛んで醜くなってしまうから付けるのでしょう。木のままであれば外側に捲(めく)れあがってしまいます。』です。
しかし、「滑り止め」の役割もありそうです。一般的な材料は柔らかいゴムや金属のようです。悩むところでした。
結局、「皮」になりました。実は、昔、「皮細工」に挑戦したことがあります。リュックやバッグをつくったこともあります。その際の皮が残っていることでフットワークが良いです。糊で貼り合せた2枚の皮を杖の先端にビスで固定します。その後3枚目を糊付けします。最後に不要部分を削除し、サンダーで整えるだけです。
今回の「杖づくり」はノウハウの全く解らない一人旅でした。しかし、何となくそれらしい風貌を呈し始めています。少しドキドキしています。
尤も、仮に不都合があったとしても、やり直しや作り直しは何時でも可能なのです。果敢に前進するだけです。
次は塗装です。さまざまな選択肢の中から採用されたのは「漆(うるし)」です。「拭き漆」です。塗って拭き取ることを数回繰り返す方法です。拭き取っても、漆の薄い膜が残ります。繰り返すことで、その膜が重なっていきます。4回目頃から艶(つや)が出る筈です。
この「拭き漆」は初回の塗りが将来に直結します。1回目はテレピン油で粘度を低くし、木部に十分浸透させます。2回目からは「上生漆(じょうなまるし)」だけで繰り返すつもりです。
1回目を終えた後は黒さが目立ちます。折角の白黒のコントラストが曖昧(あいまい)になったようです。しかし、漆は光にあたることで次第に透明化する性質があります。
話は飛びますが、この「色が落ちる」ことを、漆の世界では「色があがる」と表現します。この種の験担ぎ(げんかつぎ)は他にもあります。
「葦(あし)」は「悪し」につながることで「よし(善し)」、となり、「スルメ」は掏(す)る、失う、盗むにつながることから「アタルメ」です。さらに、聖徳太子の持つメモ用紙の笏(こつ)は骨(こつ)を連想させることから「しゃく」です。
前後しますが、「杖」づくりの最も肝要な点はその長さにもあるようです。今回は自分で使うことを目的とした試作です。使ってみて良い点とそうでないものを分析するつもりです。
自分の身の丈(たけ)に合わせた長さにしたつもりです。しかし、この長さには常識があるようです。カット後に判明しました。
身長に対する適度な長さは、160cmに対して82cm、170cmに対して87cm、180cmには92cmです。
結果的ですが、その値は自身の身長に対応する値とピタリと一致しています。0.5cmの違いも無くです。トンチンカン(頓珍漢)な順序になったものの、結果は正解です。感激すること頻り(しきり)です。
2011/05/08(日)
16:11