「越冬事情」・・・靴磨き

今日「は」今冬一番の雪です。「も」ではなく、「は」の新鮮さと断定の言葉遣(づか)いに雪の佳境を感じ取っていただきたいところです。

このところ、毎日、一番を更新しています。昨晩から今朝にかけては然程(さほど)ではありませんが、昼前後の日中が劇的です。モサモサと絶え間なく落ちてきます。片付けて後ろを振り返ると、またまた新たに積もっています。

雪片付けの結果エンプティーになるところが掃除(そうじ)に似ています。その掃除は、本来は朝と一日の終わりには必ずするようです。

ほんの少しの埃(ほこり)や木屑(きくず)等の塵(ごみ)も綺麗に掃き清めておくのです。また、全く塵は無いように見えても毎朝晩するのが掃除のあり方のようです。

これは、「靴磨き」にも似ています。昔、「どうせ汚れる。毎日磨く必要は無いのではないでしょうか。」、と屁理屈(へりくつ)を捏(こ)ねたことがあります。

しかし、『靴は毎朝磨いて出かけるものです。どうせ汚れるからといって毎日の掃除を欠かすことはないでしょ。』、と諭(さと)してくれた方がいました。T女史です。半世紀以上も前のことです。

とはいうものの、我が家の工房の掃除は、乱雑さが目に余る頃でなければエンジンのかからないことが屡(しばしば)です。意味合いは少し違うようですが、降り続く雪を片付けるには20~30cmの積雪が目安になります。

どうせ、という思いが働くのでしょうか。降っている最中は待機したくなるのです。雪片付けの今頃はいつも靴磨きを思い出します。

庭は、門から工房、そして薪小屋(まきごや)までのアプローチは毎日片付けています。しかし、屋根が圧巻です。雪を載せた屋根は風流とはいうものの、門、葡萄棚(ぶどうだな)、四阿(あずまや)はそろそろリミットのようです。

四阿の雪でBSアンテナが受信不能にもなっています。明日には手を掛けることになりそうです。


「工房事情」・・・「松風」

今日は納品日です。地元のKホテルに「コースター」と「看板」をお届けしました。女将さん、K女史、T氏等、皆さんが喜んでくださいました。

看板の取り付けを、ホテルの出入り業者に任せることも考えました。しかし、簡単な作業です。フットワークの良い、皆さんのフォローを戴いて取り付けることにしました。

以前にも経験していますが、栗(くり)の木でつくった仕掛けが見事です。寸分の狂いも無く、またトラブルも無く、一発で取り付け完了です。単に、インパクトドライバー、ビス、メジャー、そして脚立代わりの椅子だけがツールです。

一ヶ月弱を要した看板です。振り返れば、今日の取り付けに至るまで、多くの皆さんから助言をいただいています。

素材の青森ヒバの選定と提供、漆の扱い、マスキング液、筆、塗料等です。拙(つたな)い技ではあるものの、皆さんのご好意が集約された作品です。有難いことです。今晩もう一度思い出すことにします。機会をみつけて、是非、作品を評価していただくつもりです。

乾菓子(ひがし)とともにいただいたお薄(おうす)が見事です。女将さんが立ててくださいました。お茶の美味しさもありますが、お湯加減も心得たお点前(おてまえ)です。

「このお茶は初音ですか。」と聞くと、女将さんが『そうです。よくお解りになりますね。』、と応えてくださいます。


我が家のお薄では、混ざりきっていないお抹茶が底に残っていることが多いです。最後の一口まで透明感がありました。巧みな茶筅(ちゃせん)捌(さば)きだったことになります。

話は飛びますが、茶道では、お湯の温度を数種類に区分しているそうです。まず、釜(かま)に水を張って火にかけると、やがて内壁に無数の気泡が生まれます。それがプチッ、プチッと浮かびあがります。その頃の温度が「ミミズの鳴き声」です。

勿論、実際にはミミズは鳴かないものです。しかし、仮に啼くとすれば、このような音色を発するのではないか、という世界です。風雅の最たる表現です。

さらに温度が上がるとコポッ、コポッとした気泡が浮かんできます。蓋(ふた)をとって覘(のぞ)くと、それが無数の魚の眼に似ています。その所以(ゆえん)で、そのときの温度を「魚眼(ぎょがん)」と称しています。

やがてシュンシュンと湧いてきます。丁度、松林を縫う風の音に似ています。その温度が「松風(まつかぜ)」です。そしてゴボゴボと煮立つときの温度が、逆巻く波の「怒涛(どとう)」です。

お点前(おてまえ)には「松風」を用います。しかし、「魚眼」から導いた「松風」ではなく、一度「怒涛」を経た「松風」です。

実際には七音、と聞いたことがあります。これは、半世紀も前、M先生の書道の時間に教わった内容です。

「松風」は一般的ですが「魚眼」、また「ミミズの泣き声」に至っては、今ではお茶の先生であっても使わない言葉になっているようです。残しておきたい表現です。

今日、女将さんと、その「翠軒流」のM先生のお話にも及びました。不思議な出会いがあるものです。


ここ毎夕、タイヤショベルが出張しています。今日も友人に駆(か)られています。勿論、大特(大型特殊免許)と作業免許を持っている方です。筆者の3倍以上は扱いが巧(たくみ)です。

雪の量もさることながら、スノーダンプでは間に合わない年齢を迎えているのも事実なのです。


暮れて今は満天の星です。先ほどお見えのお客様が、『ツルンツルンだ。』、と言っていました。既に、です。今晩は相当な冷え込みになりそうです。

今日は長話になりました。特に「松風」は以前にも紹介したようでもあります。失礼をご容赦願うところです。

2011/01/23(日) 18:25